10月9日 金 晴

台風も過ぎ、昨日の午後から晴天。

川端要壽『堕ちよ!さらば ―吉本隆明と私』(河出文庫)読了。後半は、著者が競馬にのめりこんでいく後半生が描かれる。自らの裡にあった禁忌をついに破り、吉本隆明に金を無心するくだりが、この小説の最終章の山場になるが、そこで著者が吉本から言われる言葉が、「なあ、佐伯。人間はほんとうに食うに困った時は、強盗でも、何でもやるんだな」というものである。
小説には吉本の今井正監督「純愛物語」の批評、さらにその内容を凝縮した高村光太郎についての講演のあるくだりが引用されている。二箇所を孫引きしておく。
―「私は、人間は食えなくなったら、スリでも、強盗でも、サギでもやって生きるべき権利をもっていると、かねてからかたく信じたいと思っているが、この映画の主人公貫坊と恋人の不良少女ミツ子は、まさしく、そういうモラルの実践者なので、わたしが狂喜したのは云うまでもない」。
―「人間をはかる価値基準というものを考えていきますと、善だから価値があって、悪だから価値がないというようなことはいえないし、また、道徳的だからよろしくて、背徳的だから悪いということもいえない。ひじょうに折り目正しく礼儀正しいから、真実だから、それが価値があるというふうにもいえない。また、狡猾であるから、またどう猛であるから、それが価値がないということもいえないということです。(略)ほんとうに価値があるということは、そこに作為あるいは外界に対する配慮というものがまったくなく、やることが<自然>であるならば、つまり、やることになんら作為がないならば、狡猾であろうとどう猛であろうと、価値があるんだという考え方です。」

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by daiouika1967 | 2009-10-10 21:33 | 日記  

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