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6月11日(土) 雨のち曇

終日アジトに引きこもる。

午前中リンディホップ・スタジオ編『間章クロニクル』を読む。読了。青山真治監督が撮った間章のドキュメンタリー『AA』の副読本。大谷能生によるライナーノーツ、大里俊晴によるバイオグラフィー、そのふたりによる関係者へのインタビュー、間章の単行本未収録遺稿他で編まれている。
1960年末期から1970年代中盤くらいまでの日本へ意識をとばす。
収録された「撮影日誌」の、近藤等則が「即興」について語っている箇所。
≪「ある朝、今日もコンサートがあるんだと思いながら紅茶を飲んでたら、あ、これが即興だと気付いたわけ」
本日のインタビュイーでもある近藤等則氏はそう言った。
つまり、即興演奏とは自己の内的自由を追求することで、それならばステージ上で紅茶を飲んでいても構わないということになる。しかし、当然のことながら、それでは聴衆は満足しない。即興演奏とは究極的には「他者」の存在を前提としないものであるということを、この時に気付くと共に、自分の目の前の聴衆の存在に気付いた。それまで演奏を自分自身のために使っていたけれど、今度は聴衆が使える演奏をやろうかと思った。そう思った時、インプロヴィゼーションとコンポジションが両方いっぺんに見えるようになった……。≫


午後はルドヴィク・ヘルツベリ編『JIM JARMUSCH INTERVIEWS - 映画監督ジム・ジャームッシュの歴史』(東邦出版 三浦哲哉訳)を読み継ぐ。読了。
今度は、1970年後半から1980年にかけてのニューヨークへ意識をとばす。
『パーマネント・バケーション』をめぐるインタビューから。
≪考えていたのは、アリーのような人間には、人生における芯がないということ。違う言い方をすれば、彼の人生はある種の反抗からなっていて、しかも焦点がない反抗、まともな政治的動機がない反抗ということかな。彼には確固たる信念なんてものはない。映画の中でもそうだし、実人生でもそう。いろいろな出会いがあるけど、どうせ立ち去ってまた別の誰かのところへ流れていくことが彼には始めからわかってるんだ。だからその通りに映画を組み立てようとした。また、それが表現したかったことだね。≫
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』をめぐるインタビューから。
≪金の役割というのがこの作品のサブ・テーマだった。ここでの金は、窃盗、詐欺、犯罪によって、あるいは棚ぼた式に手に入れるものであって、日々きちんと生活して、人生設計を組み立てて稼ぐようなものじゃない。必要があれば手に入れるものとでもいうかな。このテーマは多分、今後も変わらないと思う。立身出世に取り憑かれたキャラクターになんて興味がわかない。アメリカン・ドリームなんて単純に言って、くだらないね。≫
≪映画を作っている最中に観客のことを考えすぎるのはおかしいことだとも思う。なぜなら、そうすると無意識のうちに-知ろうが知るまいが-マーケティング感覚に陥ってしまうからだ。例えば、「どんな観客層が見るだろうか、だったらなにをすべきか」なんて考えると、僕からすれば、本当に独創的で強い表現が消え去ってしまう。≫
≪ファッショナブルなものというのは、いつだってすでに過去から来てる。つまり、メディアを経由しているわけで、とにかく常に4、5年は遅れてるんだ。僕はトレンディとかファッショナブルとか言われるものはなんにせよ信じてない。≫
『ダウン・バイ・ロー』をめぐるインタビューから。
≪ある意味、もっとも平凡なものがもっとも変だと思う。でもそこに連想とか先入観が入ってくると、もう話は違ってくる。≫
≪カサベテスはすごく濃密な距離で役者と作業する。カサベテス映画の中では、なにかが役者に起きるんだ。思うに、ほかのアメリカ映画の中では起きないようなことが-たぶん初期のスコセッシには、ときどきあったかもしれない。スコセッシの映画にも同じような感動的な演技があった。でもカサベテスと同じレベルではないね。カサベテスの映画は翻訳できないと思う。カサベテスの映画では、人の話し方、振舞い方にとてもデリケートななにかがあるんだ。≫

≪ある意味、この惑星はもう全部手遅れになっている。そして、だからこそ、僕にはもっともシンプルなことがもっとも大事なことに思える。会話とか、誰かと散歩すること、あるいは雲が流れる様子、木漏れ日、あるいは誰かとタバコをふかすこと。そういうことのほうが僕にとってははるかに価値がある。わけのわからないことをああだこうだと議論することなんかよりもね。たしかに在る意味、シニカルだ。自分がニヒリストだとは言わないけど、でも僕からすればこの惑星は破壊されてしまっている。そのことはとても哀しいことだけれど、でもまだ小さな美しいものが存在していて、しかも100年もすればこういうものはもうなくなっているかもしれないんだ。≫

by daiouika1967 | 2011-06-13 08:55 | 日記  

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