9月28日(日) 晴のち曇

●朝晩と寒くなった。数日前までまだ夏が残っていたのに、もうめっきり秋だ。

●午後、安岡章太郎『戦後文学放浪記』(岩波新書)を読む。読了してから、布団にもぐりこんで、1時間ほど昼寝。

『舌出し天使』のモデルとなった服部達のスケッチ。
《父からこんな便りがきた、母の発作がますます劇しく、この分では入院させることを考えなければならない、という。私は、その手紙を服部に示し、それから何か母に対して偽悪的に冷淡なことを言った。すると服部は、眼鏡の奥から無言のまま暗い眼をジッとこちらに向けて、かすかに皮肉な笑いを浮かべた。―服部がなぜそんな笑い方をしたのか、これは私にはわからない。たしかに言えることは、彼はシニシズムの底に或る優しさを秘めており、その優しさで私を刺したということだ。》

小島信夫のスケッチ。
《傑作なのは小島信夫で、彼は文士のなかで最もクラフトマン・シップにとんでおり、二階の部屋によく閉じこもっていたが、あくる朝、編集者が部屋を覗くと、小島はバネ仕掛けのデスク・チェアーをばらばらに分解したまま、茫然と突っ立っていたりする。つまり、彼は原稿を書こうとするうちに、椅子の具合が気になって、ちょっとだけ直すつもりが、ついに一晩中かかって椅子を完全に分解したまま、組み立て不能になったというわけだ。私には、そのようなクラフトマン・シップはないが、小島の泣きたいような心情はよく理解できる。
文章を書くのも、工作作業に似たところがあって、どこか一箇所、気になるところを掘り返しているうちに、だんだん手直しの範囲が拡がって、ついに全編を最初からやりなおさなければならなくなったりする。たとい短編小説でも、やっと半分近く書き上げたところで、間違いに気づき、書き直しているうちに全体がバラバラになってしまうときは、まったく絶望的な気分になる……。カン詰めの仕事場で、自分の坐っている椅子が気になり出すのは、おそらくそういうときなのである。》


●夜、実家でカニすき。チュウハイを飲みながら、父と政治談議を交す。床屋談義の類だ。11時過ぎに帰る。
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by daiouika1967 | 2008-09-29 11:05 | 日記  

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