10月14日(火) 雨

土、日、月と連休。連休中は特に人と会うこともなく、本も読まず、テレビを眺めたり転寝したりして過ごした。
日曜の昼、ちょっとしたことで妻と険悪になり、月曜の昼過ぎまで話をしなかった。沈黙に軽く圧迫されつつ、でも、あまりそのことを考えないようにして、悪天候をしのぐような心持で、ただテレビを眺めていた。
日曜の昼過ぎになって、妻の眉間の皺が取れ、ふたりの間に漲っていた緊張も緩和した。それで、午後は、ふたりでDVDを観て過ごした。『L チェンジ・ザ・ワールド』『明日への遺言』『おれたちフィギュアスケーター』の三本。三本とも観ている間ずっと主人公に感情移入していた。

朝食は、昨夜の残りのサラダスパ。昼前、幼馴染Tに迎えに来てもらい、栄へ向かう。喫茶店に入って、ホットドッグとオレンジジュースの昼飯。1時から、協力会社の社長を訪ねて、彼の会社が入っているレンタルオフィスへ行った。
二時間打ち合わせ。興味深い仕事のネタが聞けた。すこし忙しくなる予感。形になるといいが。形になったらおいしいぜ、これ。と、こんなふうに皮算用していると、気分が高揚してきた。
3時過ぎ、幼馴染Tと別れ、本屋へ向かう。<三省堂>の棚を流して、けっきょく何も買わず、喫茶店に入って、宇野常寛『ゼロ年代の想像力』(早川書房)の残りを読む。

《社会の流動性が高まると、「何が正しいのか・価値があるのか」わからなくなる。国内では、一九九五年前後の社会像の変化がこの流れを大きく後押ししたために、九十年代後半には「世の中がわかりにくいので、何もしない(引きこもる)」という社会的自己実現への信頼低下が支配的になった。その結果出現したのが、九十年代後半の幻冬舎文学的な想像力であり、その(アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を経由した)継承者としての滝本滝彦の小説や、いわゆる「セカイ系」の作品である。
『ウォーターボーイズ』のブームの真っ最中である二〇〇二年に発表された滝本滝彦『NHKにようこそ!』は、前記の九十年代後半的な厭世観を端的に表した格好のサンプルだと言える。主人公の佐藤青年は、まさに「何をやっていいのかわからなくなるので、何もしない(引きこもる)」という、九十年代後半的な厭世観によって大学を中退した、引きこもりの青年だ。そしてそんな彼の厭世観は、「自分より弱い」美少女(精神的外傷をもつ「岬ちゃん」)に無条件に必要とされることで埋められていく。同作は男性ユーザーに「現実に価値のあること」=生きる意味をもたらすために、障害や精神的外傷をもつ女性を性的に所有する(無条件に必要とされる)というある種のレイプ・ファンタジー的な構造を持ち、そのために本作は「弱めの肉食恐竜」とも言うべき文科系マッチョイストたちの強い支持を受けた。
この歪んだ(セカイ系的)マッチョイズムの背景に存在するものは、ある種の責任転嫁的なナルシシズムである。滝本滝彦の描く主人公たちは世の中がロマンを与えてくれないことにいじけ、そのため自分より弱い少女を所有することに超越性を見出すことになる。無論、この超越性とは決断主義的に選択されたローカルなナルシシズムにすぎない。この(前提としての)セカイ系から(その出力としての)決断主義への回路が孕む暴力をどう解除するかが本書のテーマなのだが、その回答は、すでに第七章から十二章にかけて述べた。
滝本滝彦の描く主人公たちが絶望するのは、ある種の「モノはあっても物語のない」郊外的な空間である。だが、この「郊外的な」空間はほんとうに絶望的なものなのだろうか?「郊外的な」現代社会は自由と引き換えに「おもしろさ」や「生きる意味」や「承認欲求」、つまりロマンや物語を自前で調達しなければならない。国家も歴史も社会も与えてはくれないからだ。だがこれは不幸な世の中を意味するだろうか。私はそうは思わない。確かに世界は「冷たく」なったかもしれないが、そのかわり「自由」になっている。佐藤青年のような「与えられたロマンを全うする」古いタイプの人間には生きづらい世の中かもしれないが、逆に「自分で立ち上げる」新しいタイプの人間には非常に生きやすい世の中である。そういう意味では、世界は変化しているだけで、トータルでは良くも悪くもなっていないと考えることができるのだ(個人的には良くなっていると思うが)。
そして現代とは、第七章で取り上げた『木更津キャッツアイ』や『下妻物語』といった優れた郊外小説が描くように、自分から手を伸ばせば、日常の中から未だかつてなく自由に物語を掴み取ることができる世の中なのだ。ロマンは、むしろ日常の中にこそ存在する―工藤勘九郎、木皿泉、よしながふみ―鈍感で視野の狭い自称「批評家」たちが取り上げないだけで、ゼロ年代の多くの想像力がすでにそのことを示している。》


夕方、家に帰り、夕食は豚しゃぶ鍋。豚の肩ロースを400g、豆腐一丁、しらたき、水菜、まつたけ一本(実家にもらった)、最後にご飯を茶碗一杯入れて雑炊。
夜はパソコンに向かって、仕事。ときどきティーブレイクを取りながら、夜中1時まで。
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by daiouika1967 | 2008-10-15 10:16 | 日記  

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