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12月26日

午後。サティを聴きながら、小林勇『蝸牛庵訪問記』(講談社文芸文庫)を読み継ぎ、読了する。

幸田家、露伴と文の親子関係について書かれた一節。
≪文子さんは兼々自分は父から愛されていないといっていたし、そう信じていた。また古いことを知っている漆山又四郎氏も、文子さんは亡くなった歌子さんのように可愛がられなかったと私に話したことがあった。しかし、私はそうは考えなかった。私の知っている限り、先生は小言はいうが、その境遇を案じ、いつも心にかけていた。たとえば文子さんが帰ってきたころ「自分が育てたころのあれのよさがこの十年間にすっかり荒らされてしまった」といい、それを取りかえさなければならないと文子さんに遊芸の道にふたたび遊ぶことをすすめた。そして或る時は、「文子は大変よくなって来たよ」といった。
私は先生の文子さんに対する態度や、愛し方は独特なものであり、非常に厳しいが、それだけ純粋で高いものだと信じていた。時に文子さんがその問題にふれたときには、言葉少なに自分の考えをいうより他仕方がなかった。親子互いに愛していながら、少しも甘い空気が出て来ない、それが幸田家伝統のものだろうと私は考えていた。≫

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by daiouika1967 | 2011-12-26 16:58 | 日記  

12月24日

咳が出て夜ぐっすり眠れない。咽喉が炎症をおこしているようだ。夜まともに眠れないから昼周期的に眠たくなる。喫茶店に入ると暖かくて席に着くとそのまま意識が薄れる。眠気に浸されると咽喉の違和感も薄れ、聴きっぱなしの音楽が心地よくグルーヴするのに委ねてうつらうつらする。

今朝は店に入っても眠気に浸されることもなく、坂本龍一がセレクトしたグールドのバッハを聴きながら、小林勇『蝸牛庵訪問記』(講談社新書)を読み始める。
小林勇は岩波の編集者。幸田露伴との交わりを、昭和二年から編年体で追って書き留めている。露伴が還暦を越えたあたりからの記録となる。
ところどころで、折々に露伴が著者に語った言葉が、まとめて録されている。
≪今から十年くらい前までは、物事を、うむとこらえるということをいいことだと思っていた。悲しいことははねのける。そうして心の平衡を保つことにした。ところがそれは自分勝手だと思うようになった。人の苦しみを苦しみとしてちゃんと自分もそれに応じてじんわりと苦しむ、そうふうになってから、わたしは余計年をとるようになったと思う。≫
露伴の書くものには、身ごなしや精神の折り目正しさを感じるが、ちっとも力んだところ、押し付けがましいところがなく、それは露伴独特の柔軟性によるものだと感じる。露伴の底の知れない教養の身につけ方にも、対人関係における包容力にも、その独特の柔軟性が感じとれる。

ユングを連想する。
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by daiouika1967 | 2011-12-24 12:34 | 日記