人気ブログランキング | 話題のタグを見る

6月10日(火) 晴

村上春樹・吉本由美・都築響一『東京するめクラブ 地球のはぐれ方』(文春文庫)の続きを読む。熱海、ハワイ、江ノ島、サハリン、清里。
サハリンの章の鼎談で、村上春樹が、サハリンの「何もなさ」について、いっそさっぱりしていていい、というようなことを語っている。
《日本の地方都市では、選択肢が、サハリンなんかに比べると確かにいっぱいあるんだけど、面白いかって言われると面白くないんだよね、選択肢自体が。うるさいだけ。ところが、サハリンは選択肢なんてそもそもないわけじゃない。そのへん、実にがらんとしているというか、さっぱりしているというか。》
物や情報がゴミゴミと溢れて、何を選んでも、何も選ばなくても、何をしてもしなくても大差ないように感じられる。そんな環境を考えていると、日本はいちど滅びたほうがいいんじゃないか、といった気分が挿した。まず、何もない、がらとした場所に立って、そこから未来を展望できたら、どんなに爽快なことだろう。サハリンの景色を想像しながら、ふと、そんなことを思う。
続けて、車谷長吉『金輪際』(文春文庫)を読む。
夜は、DVDで映画。黒沢清監督『降霊』、ウェス・アンダーソン監督『ライフ・アクアティック』の2本。ウェス・アンダーソン監督作品を観るのはこれが初めてだ。最初しばらくは、なかなか映画の世界に入ることができなかったのだが、途中でぐっと引き込まれる瞬間があって、その後は登場人物の息遣いがリアルに感じられるようになった。エキセントリックな演出や過剰で説明的な演技は見事に抑制されているのだが、それでも、そこで描かれる登場人物たちは、どこかこの世界から外れた気配を漂わせ、なんともいえずチャーミングなのだ。

by daiouika1967 | 2008-06-11 21:30 | 日記  

<< 6月11日(水) 曇 6月9日(月) 曇ときどき雨 >>